タイトルが気に入って広告を見たときに買うつもりだったのをSさんが貸してくださった。わたしは“おたく”ではないかと自分で思ったことがあるけれど、この本を読み始めたときには本物の“おたく”という存在とは遠く離れていることがわかった。タイトルになっている“戦闘美少女”のアニメ(「リボンの騎士」「じゃりン子チエ」「風の谷のナウシカ」「セーラームーン」など)をひとつも見たことがないしね。本の「風の谷のナウシカ」でさえ、読み通せなかった。しかし、“戦闘美少女”を愛する人たちへの好奇心は人一倍あるので、好奇心を誘われて読みはじめた。
それだけではない、ものすごく嬉しいことがあった。ヘンリー・ダーガーを知ったことだ。Sさんによるとダーガーはこの本ではじめて日本で本格的に紹介されたそうだ。アウトサイダー・アートという言葉もわたしははじめて知った。
ダーガーは60年間にわたってだれにも知られず作品を創造していた。15000ページ以上のタイプ原稿と添えられた膨大な挿し絵があって、まだその物語の全貌は明らかにされていないそうだ。シカゴのノースサイドで掃除など単純重労働をしながら、貸間でひっそりと一人暮らしをしていて、80歳のとき老人施設に収容された。そのとき部屋にあるものをどうするかと聞かれて家主に全部あげると言ったのだが、その家主がダーガーの部屋の掃除をして、彼の膨大な作品を見つけたという。
10点ほど彼の絵が紹介されているのだが、中でも見開きのカラーの作品に惹かれた。「風が吹き荒れている」の部分なんだけど、少女たちがなにかに追われて走っている。淡い色使いが昔の絵本のようですごくきれいなのに全体が不気味なのだ。ヴィヴィアン・ガールズと名付けられたペニスをつけた6人の少女は「非現実の王国におけるヴィヴィアン・ガールズの物語」の中で闘っている。
ダーガー紹介をはさんでおたく論が展開されているのだが、なるほど、なるほど、の連続であった。わたしは“戦闘美少女”のアニメを見る欲求を持っていないけれど、「高慢と偏見」や「ジェイン・エア」など、違ったところで闘っている“戦闘的美少女”の“おたく”であるのかもしれないことに気がついた。(太田出版 2000円+税)