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吉屋信子「暁の聖歌」

国書刊行会から雑誌「ひまわり」復刻版のセットが出たときに予約して買ったおかげで、いまだに乙女ものが出版されると案内がとどく。いつもはすぐ捨ててしまう新刊案内がまだ手許にあるのは、淳一の絵がちりばめられているから。ときどき出して眺めている。本のほうは雑誌復刊はもうよくて、「吉屋信子乙女小説コレクション」のほうはずっと前に全集などで手に入れているから、装幀がいいので欲しいけどがまん。
昨日図書館で返却本の棚から呼んでいたのが「暁の聖歌」(ゆまに書房)であった。この本は出ているのも知らなかったし読んだこともなかった。昭和3年「少女の友」に連載されたものだという。帰ってすぐに読みだして寝る前には読み終わっていた。このスピードは吉屋信子の本にそぐわないけど、おもしろくてずんずん進んだのでと弁解。しかし、堅い出版社がなんで吉屋信子なんだろう。
北海道で農園を営む家で、祖母と叔父に可愛がられて育ったちえ子のところに、美しい叔母という人が東京からやってくるがすぐに帰っていく。彼女は不幸な結婚で生まれた子どもを実家において再婚していたのだ。孤独なちえ子はアイヌの少女ミナと仲良くなる。ミナが授業のときにアイヌの民話を語るところ、また春になって雪が溶けるころ、地面に両手をついて片頬を大地につけ「雪が逃げる!」と叫ぶところなど、北海道で育った吉屋信子ならではのリアリティがある。
S市の女学校へ行くと姉と慕う人ができるといういつものパターンだが、この人が卒業してちえ子の叔父さんと結婚して、本当の叔母さんになるという、これはちょっとびっくりのストーリー。農園では洋館を建てて待ち、すごい荷物を持ってお輿入れをする。それからちえ子の嫉妬心やら病気やらがあって、最後は東京から母が来て真実を話す。病院のベッドに横たわるちえ子の唇に母が口づけする。思わず、えっとのけぞった。まったく信子はすごーい。

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2003年06月17日 23:44に投稿されたエントリーのページです。

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