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森茉莉「贅澤貧乏」

このページに森茉莉「贅澤貧乏」という文字を何度書いただろう。暮らしの聖書のように入れ込んでいた時代があった。1963年初版で買って、それから40年。さすがにここ数年は開いていなかった。それはいやになったということではなくて、血肉化してしまったので、わざわざ開く必要がなくなったのである。
上に「赤」とつくほどの貧乏だけど、それでいて貧乏臭さというものを心から嫌っている魔莉という主人公の言葉に共感した。わたしも言葉や思想になっていなかったが、そう思って貧乏な生活をしていたから、お墨付きをいただいたようなものであった。
友人の家に行ったとき、ビールのコップにメーカー名が入っていたり、プラスチックの笊に枝豆が入れてあったらもうダメで、友人とは認めないことにしてしまう。結婚式の引き出物の花模様の鍋を使うなんてもってのほかである。そんなものを押入にいっぱい入れている人を軽蔑する。高価でも使わないものは捨てなきゃ。
勝手に軽蔑しているだけだからどうってことはないのだけれど、なかなかもって、厳しい贅澤貧乏原理主義者なのであった。森茉莉という有名人のお墨付きであることで理由付けできたのが便利であった。森茉莉がこの本を書かず、またわたしがこの本を読まなかったら、ずいぶんとぐずぐずした気持ちで暮らしていたに違いない。
近所の主婦達の会話を聞いていてついていけず、「あれは別の星の人間だ」と友人にしゃべってうっぷんを晴らすのもおもしろかった。わたしもアパートの入り口にたむろしている主婦達の間を通り抜けるのにナンギしていたから、ほんと別の星の人やと心の中で言いながら通ったものだ。

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2003年12月16日 23:35に投稿されたエントリーのページです。

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