ピーター・ラヴゼイのピーター・ダイヤモンド警視シリーズ最新作である。本の帯に「最悪の事件。警視の愛妻ステフ、殺害さる。」と大きな文字で書かれているのにびっくりして、訳者あとがきを開いた。山本さんも翻訳にとりかかる前に、カバーの内容紹介を初めて読んで思わず自分の目を疑ったと書いておられる。われらがダイヤモンド警視は愛妻ステフがいるからこそ、いままで逆境でもやってこられたのに、なんとしたことなんだと、だれにともなくふつふつと怒りがわいてきた。
ページをめくると裁判所でダイヤモンドが検挙した男が有罪判決を受けるところである。ダイヤモンドが裁判所を出ると、待っていた犯人の“女”に顔をひっかかれてしまう。家に帰ってステフに消毒してもらい、その事件について話し、その夜は仲良くベッドに入る。翌日いつもどおり仕事に行き、転勤をすすめる上司とやりあい、昼休みを過ぎたころ、ヴィクトリア公園で銃で殺された女性の死体が見つかったと連絡が入る。ダイヤモンドが行って覆いをとると、その殺された女性は妻のステフだった。捜査本部が設置され、他地域から責任者が任命される。
そんな理不尽な不条理なことがあるかとダイヤモンドも読者も思うが、話はどんどん進んでいき、ダイヤモンド自身が容疑者という事態になる。もちろんダイヤモンドは独自に動き、最後に事件を解決する。
昔彼の部下だったジュリーは他地域にいるが電話で話すことで援助するし、ステフの葬儀に関しても実際的な助言でダイヤモンドを助ける。バース寺院での葬儀はステフがどんなに周りの人たちに愛されていたかを教えてくれる。自身には子どもがいなかったが、たくさんの人たちをボランティアで支えていたこともわかる。なのになんで殺されてしまったのだ?
殺人は冷然と行われたものだった。だれであっても、いくら本人が無垢であっても、犯罪の犠牲になってしまう恐怖がひしひしと伝わってきた。(早川書房 1900円+税)