わたしはヴィクトリア時代の小説や出来事が好きと言っているくせに、ヴィクトリア時代の全体をほとんど知らなかった。正月前に図書館でこの時代を簡単に見渡せる本があったらいいな、と思って探していたらこの本にぶつかった。正月のヒマな数日を、つれづれなるままに読もうと思ったのだが、ヒマがぜんぜんなかったし、「剣客商売」が間に入ったし。でも今日ようやく読み終えた。1993年に新潮社から出た4200円のきれいな本である。
全体に図版が入って読みやすい。写真がない時代、画家は正確な絵を描いていたんですね。さまざまな階級のさまざまなシーンが絵で見られる。上流階級の人たちの服装、習慣、インテリア、遊びが華々しい絵になっている。そして貧困階級の貧困のありさまがリアルに見られる。上・中流家庭から没落した教養ある女性がなる家庭教師の悲哀、屋根裏のお針子、救貧院で入所を待つ人たち、貧困の生活からアメリカなど新天地へ脱出する人たち。そして、停車場、旅の車中、子どもの情景…リアルな絵は百の言葉よりも語りかけてくるものがある。
イギリスの画家の名はターナーとホイッスラーしか知らず、ラファエル前派のことを数年前にかじったくらいだった。こんなにたくさんの画家の仕事があったんだ。