数ある吉屋信子の作品の中でもいちばん好きなのが「紅雀」だ。小学校1年のときに家にあった姉の本を読んで以来のお気に入りである。わたしがいま持っているのは、1977年にポプラ社から出版された新書版である。もうぼろぼろ。内容は同じと思っても、最近ゆまに書房から出た新刊本を読むと楽しい。これは買うつもりだったのだが、装画が松本かつぢなので図書館で借りた。松本かつぢも嫌いではないが、ちょっと違う。中原淳一だったらなぁ。
辻男爵家の家庭教師、純子は故郷から東京行きの列車に乗る。同じ列車にまゆみ、章一のきょうだいと母親が乗っているが、母親が車中で衰弱死してしまう。純子は2人をほおっておけず男爵未亡人に頼んで引き取る。その家には兄の珠彦と妹の綾子がいて優しく接するが、珠彦と結婚をたくらむ金持ちの娘の利栄子は意地悪である。まゆみは自立心の強い少女で、養われる生活に耐えられない。利栄子の意地悪が過ぎた日、まゆみは家出する。
それからのまゆみの苦難の生活と、男爵家のほうでまゆみの身元が立派な家柄とわかるのが並行して書かれ、最後は大団円なのだが、ただの幸運ではなく、努力して報われる幸運に書いてあるところがうまい。
「屋根裏の二処女」と「紅雀」の2冊がわたしのおすすめ吉屋信子本です。