田辺聖子の小説「ジョゼと虎と魚たち」が映画化されて評判が良い。いまも上映中という広告を今朝の新聞で見た。わたしは小説は読んでないし映画も見ていないのだが、“ジョゼ”ってなんでだろうと興味を持った。わたしの知っているジョゼはフランソワーズ・サガンの3冊の小説の主人公である。それで映画紹介を読んだらやっぱりそうであった。田辺聖子の原作の主人公がサガンが好きで、だから自分でジョゼと名乗っているそうな。
わたしもサガンが好きだった。好きで好きでしかたがない時期が長くあった。中でも好きなのがジョゼ・サン・ジルという女性が主役の三部作で、このひとは「一年ののち」(1958)「すばらしい雲」(1962)「失われた横顔」(1975)の中で恋をし、結婚し、結婚に破れ、金持ちの男に救われるがその男につきまとわれ、最後にようやく、ほんとうにぴったりの人と出会い結ばれるのである。
わたしがいちばん好きなのは最初の「一年ののち」である。
ジョゼは親からの仕送りで遊んで暮らしていて、医学生のジャックと同棲している。作家志望のベルナールはニコルというおとなしい妻がいるが、ジョゼに惹かれている。野望に燃える若き女優ベアトリスは役のために、劇場支配人のジョリエと利用しあう。そしてベアトリスに惚れ込んだ青年エドワールがいる。夜会を催すのは初老の夫婦アランとファニー・マリグラスだが、アランはベアトリスに夢中である。
アンドレ・モーロアがプルーストのゲルマント家の夜会を思い出させると言った、マリグラス家の夜会ではじまり、それから一年後の夜会で終わる。
夜会の最後のシーンが好きだったのね。
【「いつか貴女はあの男を愛さなくなるだろう」とベルナールは静かに言った。「そして、いつか僕もまた貴女を愛さなくなるだろう。我々はまたもや孤独になる。それでも同じことなのだ。其処に、また流れ去った一年の月日があるだけなのだ…。」「ええ、解っているわ」とジョゼが言った。】
あと数行で物語は終わるのだが、よかったなぁ。こんな言葉に若いわたしはしびれていたんだ。