先日おいしそうな大根を前に、どうして食べようかと少し悩んだ。ブリ大根、イカ大根、おでん、粕汁、タヌキ汁、冬中いろいろして食べた。違う食べ方がないかなと考えたら、先週テレビドラマの「剣客商売」で、おいしそうに大根を食べていたのを思い出した。大根だけを出し汁で炊いたと言っていた。さてどんなものか。
そのあとで「剣客商売」4冊目を読んだら、その大根の食べ方があった。「約束金二十両」の中の一節である。老浪人平山太兵衛が持ってきた大根を、おはるが鉄鍋にたっぷりと薄目の出し汁を張り、大根を切り入れ、ふつふつと煮えたぎったのを炉端で食べさす。小皿にとって、「粉山椒をふったほうがいい」と小兵衛がすすめる。「こりゃあ、うまい」「そりゃあ、平内さん、大根がよいのだ。だから、そのまま、こうして食べるのが、いちばん、うまいのじゃ」なるほど。
うちにあるのは、ポランの宅配が持ってきた、ほんとにおいしそうな太い大根である。昆布とカツオたっぷりの出し汁をつくって大根を炊いてみたら、そのうまいこと、うまいこと。粉山椒を買い忘れたがなくてもうまい。
「約束金二十両」は古い百姓家に住む老浪人平山が、隣に住む百姓の娘おもよが茶屋の出物があるのを、二十両で買いたいという熱望をかなえるために、剣術の試合を計画する話である。勝ったら三両もらい受けるという立札を神田明神社に立てたのを見て、大治郎と三冬が行き、小兵衛も行く。すべて終わったあと小兵衛を訪ねてきた平山は、小兵衛とおはるが夫婦なのを知り驚く。小兵衛は平然と平山におもよと暮らせと言うのである。「こだわることはない。養っておもらいなさい」。(新潮文庫 552円+税)