テレビドラマのほうは、大治郎と三冬はとうに結婚して小太郎という男の子がいる。わたしが追いかけて読んでいる本のほうは、意識しあってはいるものの、なかなか進展しないからいらしているところである。結婚することがわかっているけど、なんとかせんかいなと読みつつ思うんだからうまい小説である。
昨日は大治郎が明け方に夢でにやついていたとかで、三冬がその原因をただそうと剣を打ち込むのを、大治郎がたじたじと受けていた。楽しい夫婦である。小兵衛と意次は「三冬が女になった」と喜ぶ。
5冊目「白い鬼」には七つの短編が収められていて、秋山小兵衛も驚く手裏剣の名手お秀が主役の「手裏剣お秀」がよかったけれど、ここはやっぱり「三冬の縁談」でしょう。
老中田沼意次の妾腹の娘である三冬は剣道に開眼して男装で暮らしている。意次が婚期を過ぎた娘に嫁に行くようすすめると、自分より剣の強い人ならということで、試合をしてはやっつけてしまう。今回も三冬は自分が勝つと信じて疑わない。でも相手の名前を聞いた大治郎は青ざめる。その男が三冬より強いのを大治郎は知っていた。
父親のところへ行ったものの、煮え切らない態度でいるのを小兵衛に問い詰められ、三冬への恋を白状する大治郎のかわいいこと。小兵衛も考えあぐねてしまうが、弥七の協力でその男の性格がよくないのを知り、人知れず三冬との試合に出られないようにする。
三冬と大治郎の世間知らずの初々しさが気持ちよい。その次の「たのまれ男」の最後で、小兵衛は「そういえば佐々木三冬……いや、お前の恋女の始末を、これから、どうつけるつもりかよ?」と聞いている。返事をはぐらかした大治郎だが、次の6冊目にはきっと決着がつく一編があるのでありましょう。そう言えばその話、テレビで見たっけ。ああややこし。(新潮文庫 552円+税)