「しましまのおひげちゃん」は「幻のロシア絵本1920-30年代展」で手に入れた復刻絵本である。復刻絵本は数冊あったけど、わたしが欲しいと思ったのはこれ1冊だった。展示されている絵本の中で、いちばん欲しかったものなのでうれしい。ネコ絵本のコレクションに1冊加わったこともうれしい。
サムイル・マルシャークは日本で何度も上演されている「森は生きている」の原作者である。俳優座がやった「森は生きている」を見たのは、ずーっとむかーし、千田是也演出、岸輝子主演だったと覚えている。ロシアの民話からとった美しい物語だった。岩波少年文庫から本が出ていたはずだ。
マルシャークという忘れていた名前を、ここで見つけたときはびっくりした。少女がネコを抱いてネコ型のソファに座っている表紙。マルシャークの詩を別に訳してあるのがありがたい。4歳の女の子が子猫をいろいろとかまってやるお話で、わが子のように世話する女の子を裏切ってばかりいる子猫の様子がかわいい。詩はもちろん素敵だけど、淡い色合いとやさしいタッチの絵がすごくいい。モダンで都会的で…。
美術館では「ロシア絵本の幕開け」からはじまって、隆盛を迎え終焉にいたるまでがわかりやすく展示されている。エピローグは「そして誰もいなくなった」というタイトルになっているのが悲しい。1950年代のはじめに、マルシャークとレーベジェフはこの「しましまのおひげちゃん」をリメイクするのだが、マルシャークの詩はそのままなのに、レーベジェフは全体を描き直した。その絵本も展示してあるのだが、それは、いま大量に出版されている絵本と変わらない普通の絵本になってしまっているのだ。上手な絵だけど、ただそれだけの。