セロリの大きな株があるので、丸元淑生さんの料理の本で教わった「ジャガイモとセロリのブレイズ」をつくることにした。実はポランの宅配にセロリがあるときはほとんど毎週つくっている。簡単にできておいしいし、セロリを一度にたくさん食べられる。
今朝、そのセロリを切っていたら、すんごい良い香りがただよった。春のセロリの匂い。
その瞬間「窓を開けましょうか。春の匂いがいたしますよ」という言葉が浮かんだ。フランソワーズ・サガン「熱い恋」の一節である。この本は一時熱狂して読んだが、数年前に整理してしまって手許にない。それで記憶のままに書くことにするが、もしかしたら記憶違いがあるかもしれない。違っていたらごめんね。
社交界でも評判のよい独身の実業家シャルル(60代前半という感じ)は、若い女性リュシールといっしょに暮らしている。リュシールは物憂いしぐさとものを持つことを嫌う性格の美しい女性である。シャルルはリュシールに新型のスポーツカーのキーををさりげなく贈る。早春の朝、黙って早起きした彼女は、家政婦(長いことここで働いている)に言付けをして新しい車で出かけてしまった。家政婦が言う言葉が「春の匂いがいたしますよ」で、ふだん詩的なことを言わない家政婦をいぶかしげに見たシャルルに、淡々と「リュシールさまがだんな様がお起きになったらそう言うようにと…」と言うのである。そして朝食をとったのかと聞くと「オレンジをひとつ持たれて、早く春に会いにいかなきゃ、と言って…」と答える。
そのリュシールが真実の恋をして出ていき妊娠してしまう。子どもを産んで普通の暮らしをしたい男を愛しながら、スイスでの中絶費用をシャルルに出してもらうリュシール。最後がシニカルでよかったなぁ。この本捨てなきゃよかった。
「別離」というタイトルで映画化されてカトリーヌ・ドヌーブが主演だった。ドヌーブは堂々としすぎて、しおたれた女の魅力を出せなかった。サガンの主人公はあまりにも映画的すぎて、いざ映画にしてみるとその魅力が映像で表せないのである。