「剣客商売」のシリーズは秋山小兵衛とおはる、大治郎と三冬の親子カップルが主役だが、その他にもさまざまなカップルが出てくる。もと料亭「不二楼」にいた板前の長次と女中のお元がいっしょになって「元長」をはじめた。ご用聞きの四谷の弥七は女房のおみねが小料理屋をしているので、心置きなく仕事に打ち込める。
12冊目でわたしが好きなのは「罪ほろぼし」。主人公の永井源太郎が農家の寡婦おふくの家で抱き合っているところからはじまる。源太郎は旗本の子だったが、父親がお目付衆という役職にあったとき、辻斬りの快楽にはまって小兵衛に斬りつけたところを、つかまって切腹お家取りつぶしとなった。源太郎は苦労の末、知人の世話でおふくの家の物置小屋で暮らすようになり、おふくと愛し合うようになった。商家の夜の用心棒となって暮らしを立てていて、月に2・3度はおふくのところに帰る。その商家に盗賊が目つけて、まず用心棒の源太郎をやっつけてしまおうと、浪人どもが切り掛かかったところを、通り合わせた小兵衛が助ける。そして大掛かりな押し込み強盗を小兵衛ともどもやっつけるのである。
最後に小兵衛の家へ弥七がやってきて事件の後始末の話をし、源太郎が雇い主に了解を得てふくと結婚し、ふくの家から通っているそうだと言う。
そこへ永井源太郎がふくを連れてやってくる。8歳年上で子どもがいる上に美しくないふくだが、「このたび、妻を迎えましたので、御礼かたがた、御挨拶にまかり出ました」と源太郎は顔をあからめつつ言うのである。