いまわたしが一番好きなハードボイルドミステリーの主人公は、イアン・ランキン描くスコットランドの首都エジンバラで活躍するリーバス警部である。仕事にのめりこみすぎて上司とうまくいかないし、妻には去られるし、というのが多い警察小説の主人公の中でも、特別にひどい一人ではないかしら。でも、ハリー・ボッシュ刑事より乾いていて好き。ロックをよく聴き、ローリング・ストーンズが好きなところにも共感している。最初読んだときはびっくりしたけど、ストーンズに熱狂した世代も50代になってるんだ。自分のことを忘れて考えたらあかんね。
この本には、リーバス警部が出てくる作品が7編、その他が14編収められている。リーバス警部が出てくるとうれしいけど、短編だから物足りなくて欲求不満になってしまった。早く次の長編が読みたい。かえってリーバスものでないほうの、ノワールという感じの作品に、ランキンの魅力や短編作家としての能力があるように思った。昨日このページに書いたローリング・ストーンズを主題にした作品「グリマー」は当時の雰囲気がよく出ていてよかったし、「会計の原則」の結末の「帳尻がきっちり合うこと」という会話がうまい。
今年のエドガー賞は日本人の桐野夏生さんが候補作に選ばれたことで、日本でも早くから話題になっていたが、イアン・ランキンの「甦る男」が受賞した。これでもっと読者が増えたらいいのにね。(ハヤカワ・ミステリ 1600円+税)