女性法人類学者テンペランス(テンペ)・ブレナンが主人公のミステリー第3作である。作者のキャシー・ライクスはテンペと同じ女性の法人類学者だから、丹念に死体の骨を調べるところなど、信頼して好奇心を満足させてもらえる。ちょっと書名がヘンだけど、女性探偵ものらしく真面目すぎるほど真面目な作品だ。
テンペはアメリカ南部のノース・カロライナ大学で教えながら、頼まれてカナダのモントリオールで法医学研究所の仕事もこなす忙しい人である。ブレナンという姓はアイルランド系だとあって、西部劇によく出ていたアイルランド出身の俳優はウォルター・ブレナンだったなんて思い出した。
今回のテーマは「ヘルス・エンジェルス」からの流れにある暴走族による暴力である。1969年オルタモントにおけるローリング・ストーンズのコンサートで名前をはせたヘルス・エンジェルスについては知っていたけど、その流れの暴走族が現在の北米でどんなことをしているかは知らなかった。いまは大組織を維持するために厳しい条例を作って、会員を統制しているという。男性優位の世界で、女性はヒエラルキーの底辺に位置している。女性は買われ、売られ、ハードウェアのように交換され、ひたすら利用され、虐待されているという。
物語はエミリー・アンヌという美しい9歳の少女の額に弾丸が2発めりこんでいた、という書き出しで始まる。その前にアメリカにいたテンペはケペックからの緊急呼び出しを受けて、爆弾で吹き飛ばされた暴走族2人の遺体鑑定作業に取りかかっているところだった。テンペは司法管区の枠を超えて結成された〈クズリ作戦班〉のメンバーとなり、仕事することになる。テンペの仕事場はモルグと解剖室である。猫と暮らす住まいに19歳の甥キットを預かることになるが、オートバイ好きのキットも事件に巻き込まれてしまう。
事件とかかわるところはハードボイルドだけど、甥との関係となるとちょっとウェットになるし、恋人のこととなると乙女のようになるところが少しかなわんけど、暴走族というのは21世紀のマフィアであることをしっかりと勉強させてもらった。(講談社文庫 1048円)