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池波正太郎「剣客商売」16冊目、最終回「浮沈」

いよいよ最後の1冊となった。このシリーズは18年間にわたって書き続けられてきたが、作者の死去によりこの「浮沈」で物語は終わってしまった。とは言うものの、物語は中絶という感じはしなくて、すべて書き尽くしての終わりのような気がする。田沼意次の失脚、秋山小兵衛の徳川武家社会への絶望感と老い、そして、さまざまな登場人物に決着がついていく。また、小兵衛は93歳まで生きるが、小兵衛よりも早くおはるも弥七もこの世にいなくなっていると未来まで書いている。
物語そのものは、ますます巧みになって、いろいろな登場人物が出てきて結びつき話が進んで行く。
昔試合をして負かした相手にそっくりな青年に出会い、話をすると、やっぱりそのときの相手の息子山崎勘之介とわかる。勘之介は敵討ちなどする気がないという。小兵衛は彼を結局助けることになる。
また、顔で損をしている金貸しの平松多四郎および息子の伊太郎と、小兵衛の関係がすがすがしい。多四郎が無実の罪で打ち首にされる。獄門にさらされている首を盗みに行くという伊太郎を助ける、小兵衛の親のような愛情が楽しい。
なんやかんやと読みどころの多い作品だけれど、いちばん楽しかったところ、それは又六と秀の結婚である。ある日、小兵衛の隠宅へ又六が現れる。その向こうに女性が見えるのが、誰かと思えば杉原秀なのであった。すでに妊娠中なので、又六の母親を説得してほしいという。2人は武士と町人という身分違いである。秀は武士の娘で亡き父がやっていた道場で、百姓たちに剣術を教えて生計を立てている。この前の事件では又六といっしょに行動することが多かった。そのときに情が移ったらしい。又六はこのシリーズの前のほうに出てくるのだが、うなぎの辻売りをしていて、兄に売り上げを取られるのを防ぐ為に、強くなりたいと大治郎に師事した間柄である。母親ともども、なにかと小兵衛の役に立ってきた。弥七が又六によい結婚相手をさがしてきたところへの、この報告である。
最後に小兵衛75歳のときの1シーン、そのころは、もう、以前のようにしゃべることも少なくなり、おはるを相手に黙然と日を送っている。そこへ京都に住む伊太郎が妻を連れて挨拶にくる。その穏やかなやりとりでこのシリーズは終わり。(新潮社文庫 476円+税)

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2004年06月17日 21:37に投稿されたエントリーのページです。

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