テレビの深夜映画でやったのを録画して見た。この映画は当時の封切りで見ていなかったし、ビデオでもテレビでも見たことがなかったので大収穫であった。1960年代後半から70年代前半にかけて、わたしは東映ヤクザ映画をたくさん見た。なかでも感動したのは「日本暴力団・組長」(1969)で、滅びゆく正統的ヤクザの典型を演じた鶴田浩二にいかれてしまった。当時はどちらかというとこのタイプの、リアリズムという感じの戦後ものが好みだった。もう少しあとになって様式美の「昭和残侠伝」がよくなった。「緋牡丹博徒」を見だしたのも後になるので、シリーズ全8作の後半は見たのだけれど、第1作は見ていなかった。
映画とジャズに夢中な時代で、ヤクザ映画だけでなく、アートシアター系・・・ベイルマンとかブニュエルなんかを眉に皺をよせて見ていたものだ。映画の古典ドイツ表現主義の上映会も追いかけて見ていた。つまりバリバリの映画少女(笑)だった。そしてジャズのライブに行ったり、ジャズ喫茶で長居したりと、仕事はしていたけれども、遊ぶのが忙しかった。いまもたいして変わらんけど・・・。
そんな頃を思い出しながら見た「緋牡丹博徒」は山下耕作監督である。わたしはどっちかというと、加藤泰や鈴木清順よりも山下耕作のほうが好き。きちんとした演出で、けっこう複雑なストーリーが展開される。藤純子の比類なき完璧な美貌がすごい。高倉健のストイックな美しさ、若山富三郎のユーモア、待田京介の愛らしさ、清川虹子のいさぎよさ、みんなよかった。
藤純子の緋牡丹のお竜が、悪いほうのヤクザの親分に「酌をしろ」ととっくりを渡されたのを受け取って、「あたしは酌というものはしたことがなかばい」と親分の顔に酒をぶっかけたときのカッコよさにしびれた。清川虹子もまた大阪堂島の女親分で貫禄十分な上に、情のあるいい女をしっかりと演じていた。