鈴木清順監督の1963年の日活映画。小林旭のむちゃくちゃ奇麗な顔にため息が出た。凛々しい眉に清純な目、頬を横一文字にはしる刀傷、たくましいからだ。すっきりとした着物の着こなし。ヤクザ映画はたくさん見たが、鶴田浩二にも健さんにも池部良にも菅原文太にもない美しさだ。
タイトルに平林たい子原作「地底の歌」とあるのでびっくりした。子どもの頃に家にあった「婦人公論」で、なんだかよく理解できないえげつない小説を読んだ覚えがある。それ以来読んでいないけれど、この感想は失礼なのでなにか読まんとあかんな。
この映画は今日はじめて見た。封切り当時は友人の親が日活の株を持っていて株主招待券をくれたので、女の子2人でよく見に行ったのだが、わたしは小林旭が好きで、裕次郎を見たいという友人を引っ張って、「銀座旋風児」シリーズと「渡り鳥」シリーズに通ったものである。だけど基本的に洋画好きと言っていたので、この映画館通いは見栄でナイショにしていた。せこー。
鈴木清順がすごいということはなんにも知らなかった。シリーズ物でないしヤクザ物だったから行かなかったのだと思う。ヤクザ映画に目覚めたのはずっと後で68年頃に東映映画をむさぼり見たものである。それよりずーっと後に、鈴木清順が超有名になってからのアートっぽい映画を見たが、あれらはわたしにはええとはぜーんぜん思われへんかった。
だけど「関東無宿」はすごい映画だ。小林旭扮する主人公が古風なヤクザ道を通していこうとする生き方は、親分の現実主語とぶつかる。好きな女は女博徒で“おかる”といういかさま賭博をやるヤクザの女房である。最近台頭してきた組との抗争がある。ヤクザが好きと言って売り飛ばされる女学生花子がいる。日本家屋の陰影が画面に陰惨な美しさを出している。暗さが美しい。最後に斬り込んで二人を刀で殺し、一人を拳銃で殺して警察に自首するが、それだけやったことが無駄だったと警察で知るところが哀れ。でも自分は自分の思うようにやったからいいのだという気高い男なのである。鈴木清順ってすごい。小林旭もすごい。取り巻く役者たちもすごい。地底から聞こえるような浪花節のようなうなり声がすごかった。もう〜べた褒めです。