「悪党パーカーシリーズ」の20作目。最初の数冊をおもしろいぞと父親がくれたのを読んだのがはじまりだった。その後東京在住の弟に会ったとき、これはおもしろいから読めと言われて、とうに読んでるわいと返事したことがあるが、その弟は早死にしてしまった。いまはその娘が古本屋を探しまわってけっこうな値段で買っているらしい。今回も「電子の要塞」買いましたよとメールがきた。
なんで強盗の小説がおもしろいんだろうと考える。まるで鬼平さんが強盗になったみたいなパーカーである。頭が良くて、気が利いて、体が頑丈で、意志が強い。そして非情である。まんまハードボイルド。同じハードボイルドでも私立探偵のようにセンチメンタルなところがない。
さて、「電子の要塞」は出だしからすごい。【電話が鳴ったとき、パーカーはガレージで男を殺しているところだった。】、ようやるわ、としか思いようなく読み出すと、すぐに仲間から電話がかかり、仕事を一緒にやらないかと誘われる。いい感じ。無駄がなくスピードがある。仲間に会いに行くのに、殺した男が持っていた名前とクレジットカードを使う。パーカーは当面の仕事をすませてから加わると言い、殺した男の背景を探ってひとつひとつ潰して行く。丹念なプロの仕事である。
今回は題名のように、相手は“ドット・コム業界”で大金を儲けて世界のあちこちに屋敷を持つ大金持ちである。その“電子の要塞”を破るための頭脳が必要だが、仮出所中のエレクトロニクスの専門家ロイドが加わる。ロイドの心理状態に納得させられたし、強盗される側は同情できないように書いてあるし、最後はうまくいくとわかっていてもはらはらしてしまうし、うまい職人芸に堪能させてもらって満足して終わる。最後の悪党どうしの少ない言葉のやりとりにほろりとするものがあった。
パーカーってやっぱり魅力がある。いま映画にしたら役者は誰がいいかなぁ、おれへんなぁ。メル・ギブソンは似合えへんかった。また《殺しの分け前/ポイント・ブランク》を見たくなった。35年も前に見た映画で、数年前からはビデオで何回か見ているが、リー・マーヴィンとアンジー・ディキンソンよかったなぁ、とまた言っております。(ハヤカワ文庫 760円+税)