この前の日曜日の朝、桂文枝さんの「天神山」がテレビ(NHK 5月15日 かんさい想い出シアター 平成11年放送のもの)であった。だいたい日曜日の午前中は寝ている。起きていてもテレビを見るなら田原総一郎が出ているやつである。テレビの番組表を見るということはない。それがなぜかテレビ番組表を見たわけで、それも10時少し前で、あわてて録画したのを田辺寄席不参加の代わりに昨夜見た。
花見の季節に道ばたで立ち話をしている二人の前に現れた“ヘンチキの源助”という変わった男。髪は半分剃っていて半分は長い。着物は上が単衣で裾が綿入れ、足元は下駄と草履というヘンチキなやつ。溲瓶に酒を、おまるに弁当を入れて、墓場に花見に行こうと一心寺へ。墓場で拾ったしゃれこうべを持って帰ると、夜中に心中の片割れの小糸さんの幽霊がやってくる。しゃれこうべは小糸さんのもので、その夜から小糸さんは源助の女房になる。かたや、隣家の“どうらんの安兵衛”はその話を聞いて、自分も幽霊を嫁にしようと一心寺へ行く。骸骨がそんなに転がっているわけなく、向かいの天神さんに行ってお参りしていると、狐を捕らえて売りに行くという角右衛門と会う。お金を払って狐を助けると、今度は狐が安兵衛の女房になる。二人の間に子どもができて、その後の話は歌舞伎の「芦屋道満大内鑑」(葛の葉の子別れ)のパロディになる。
幽霊が訪ねて来て女房になってしまうというところまでやるところがすごい。また隣家の男が真似をしようとして結局は狐を女房にするが、子どもができるという長い時間を夫婦円満で過ごすという発想もすごい。話し言葉の最後に「コン」とつけてしまう狐女房が哀しい。
6年前の文枝さんの若々しく艶のある表情と声に惹きつけられてじっと見ていた。去年「船弁慶」を田辺寄席で聴いたときは枯淡の芸に魅せられたが、6年前の「天神山」は円熟の芸であった。