ケン・ブルーウンの「酔いどれに悪人なし」は、アイルランドの私立探偵ジャック・テイラーを主人公にしたシリーズ第1作である。わたしはものすごく気に入ってしまったので、たくさん売れてシリーズ全部を翻訳出版されることを願っている。第2作の翻訳が出たというのでまず一安心。
ものすごく暴力的で現代的な作品で、ハードボイルド私立探偵小説もここまできたかと思わせる。まさに新しい突破口を開いたんじゃないかしら。
さて、22日にこの本の感想を書いたのだけれど、まだしゃべりたいことがあった。
本の最初のほうでジャックが床屋に入るところがある。【床屋はおれを“旦那”とは呼ばなかったが、その言葉が周囲に漂っていて、いつでも言える状態だった。】というような床屋でかかっている音楽が、ジョイ・ディヴィジョンの1979年のアルバム「アンノウン・プレジャーズ」。これをわりと好きだと思い、「なかなかいい」と言うと、床屋はボーカルのイアン・カーティスの自殺について話し、髪を切る手をとめてうなだれた。ジャックはそのあと仕事にとりかかる前にレコード店に寄って、知り合いの店員にジョイ・ディヴィジョンのレコードを買いたいと言って「あんたが…?」と笑われる。だが買う。
それだけのことだけど、実はわたしはジョイ・ディヴィジョンの「アンノウン・プレジャーズ」が出たときにすぐに買って何度も聴いて大好きだった。レコードを処分したあと、CDを買っていまも持っている。いま久しぶりに聴いたけど、やっぱり好き。イアン・カーティスの舞台での姿が見られるビデオも大切にしまってあるのでそのうち見よう。ジャックは優雅さと残忍さが奇妙に混じり合った音と表現している。