最近はヤキがまわったらしく、新しいミステリーを教えてもらって読むことが多い。今回も関東在住の姪から送ってもらったもの。“負うた子に教えられ”というけど、負うたこともない子に教えられている。
アイルランドの私立探偵、しかも飲んだくれと聞いて、さきにイメージができてしまったけど、イメージをはるかに超えた作品だった。私立探偵小説というより暗黒小説という感じであった。
主人公ジャック・テイラーが住む場所はアイルランド西部の中心都市ゴールウェイ。アイルランド国家警察に勤務していたが、魔法瓶のコーヒーにブランデーをしこたま混ぜたのを飲んで、スピード違反の車を止め、乗っていた議員を見逃すことをせずに逆になぐってしまい警察をクビになった。それ以来私立探偵をやっているが、事務所を持つようなことはせずパブで依頼を受けている。ゴールウェイでいちばん古く昔と変わらぬバー「グローガンの店」は本物の酒飲みのパブである。しかもジャックを締め出さない唯一のパブでもある。店主のショーンとは口喧嘩をしながらも友情で結ばれている。この店に美しい女性アンがジャックを訪ねてきて、娘のサラが自殺したのが信じられないので調べてほしいと言う。そして帰り際に一言、「なんであなたはアル中なの?」これにかっとなって、なんでアル中に助けを求めるのかと聞き返すと「あなたにはこれしかできることがないから、優秀だって言われたのよ」だって。調べはじめると厚く暗い壁にぶつかり、体を傷めながら事件の核心にせまることになる。
ジャックは酒に溺れるが、本も溺れるほど読んでいる。章のはじめにある引用文はオスカー・ワイルド、W・H・オーデン、エド・マクベイン、フランシス・ベーコン、ウォルター・モズリイなど。友人のホームレスが入院しているのを見舞いに行って、詩を預かって帰るが、その友が死ぬと埋葬まで一切やってから詩を読む。
すごくセンチメンタルでシニカル、好きなタイプだ。好きだけど深くつきあったら迷惑をかけられそう。だからといって放っておけない。困るなぁ。(ハヤカワ文庫 860円+税)