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水上瀧太郎「大阪の宿」

この本は小6のときに読んだものを再読したいと思っていたところ、講談社文芸文庫の目録を偶然見て最近出版されたのを知った。登場人物の芸者お葉、あだ名が蟒(ウワバミ)というのををいまだに思い出すほど印象に残っている。家にあったのは明治大正文学全集であったと思う。大阪大空襲で家を焼かれて避難先に落ち着いたときに、父親が古本屋で焼け残りの本を買ってきた中の1冊だったと思う。活字に飢えていたようで、いろんなジャンルの本があった。わたしにとってはお陰さまでいまの雑学の素になっているような。その中でいちばん印象に残っている本である。谷崎潤一郎の「痴人の愛」ほど強烈ではなかったが。
で、読んだのだけれど、もう1冊、「大阪の宿」の前に「大阪」というのがあるのがわかった。「大阪の宿」の中で「贅六」という本を書いたと出ているのが「大阪」らしい。東京人が見た大阪ということのようだ。辞書を引いたら【贅六(ぜいろく・ぜえろく)=人を罵る言葉。江戸時代、江戸の者が関西の人を嘲って言った呼び方。】とあった。語源もあるので興味のあるかたは調べてみてください。
その「大阪」のほうに作家志望の若者が持ってきた小説原稿のタイトルが「ある泥濘に生きる人々」というのであった。しょうもないことを覚えているなぁ。そうそう、主人公は作家が副業で昼間は保険会社勤務のサラリーマンである。
ええっと「大阪」だけど、主人公の三田は東京から転勤で大阪に来る。天満の下宿屋がよくなくて代わりを探しているとき、飲み屋でカントダキを食べていると、酔っぱらったおっさんが「下宿は酸月」がよいと言う。酸月は土佐堀(いまのYMCAのあたり)の旅館で、おっさんはそこの親戚で居候だった。三田はそこに一室を借りて歩いて通勤することになる。ホテル住まいと同じですべての世話を女中たちがしてくれるが、彼女らのおしゃべりや、同宿人の女癖の悪いのに悩まされる。それから1年半にわたる大阪生活の話で、東京できちんと育った青年が大阪の庶民のオナゴたちに翻弄されるさまがおもしろい。芸者蟒(ウワバミ)もちゃんと出てきて、ウワバミのごとくコップ酒を深夜にいたるまで飲むのである。元女中が新しく働いているところが御霊神社の裏というのだから、西区住民としてはうれしい話だ。そこで旅館の人たちやウワバミとお別れの飲み会をして、三田が一席ぶつところにほろっとした。(講談社文芸文庫 1200円+税)

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2005年08月17日 20:48に投稿されたエントリーのページです。

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