本書を読むまで、マイクル・コナリーのハリー・ボッシュ刑事シリーズは好きであるものの、一番目ではなかった。ハードボイルド警察小説で一番好きなのはイアン・ランキンのリーバス警部シリーズと、かなり古いがウィリアム・マッキルヴァニーのレイドロウ警部シリーズだ。いずれも上部との軋轢があり警官でいつまでいられるか心配しながら読むのが快楽(?)なのである。ボッシュ刑事に関してはその心配の度合いを超えてしまっているので読むのがしんどかったのだ。
本書では、警察を早期退職したボッシュはやり残した仕事を自力ではじめるんだけど、警察からもFBIからも横やりが入る。警官のときの相棒キズ・ライダーだってのっけから手を引くように言いにくる。もちろんそんなことで捜査をやめるボッシュではない。最後のほうでFBIのリンデルは言う。「いつだって自分が欲しているものだけを探しているんだ。この男はいつだって私立探偵なんだ。バッジを持っていたときもな」ライダーはなにも言わなかったけど、その意見に同意しているのがわかった、と続いている。それでわかったのはボッシュは私立探偵であるほうが自然な人だということだ。本書を読んで自然にハリー・ボッシュ最高と思った。シリーズ中一番素直に読めた。
捜査中の会話「・・・おれは宗教について考えており、自分の中に敬虔な気持ちのようなものがあると思っている。規範というのは宗教のようなものだ。それを信じなければならない。実践しなければならない。・・・」だから彼は警官のとき自分の事件だったのを、本署の強盗殺人課にに持って行かれ、未解決のままになっている殺人事件の捜査を自分で行おうとする。
事件はとても複雑でおどろくべき結末となる。その中で別れた妻と会う場面があって涼風が吹き抜ける感じだし、物語のラストは爽やかだ。
字が大きくて読みやすいが、1冊を無理に上下に分けたような気がする。とは言え、とても正義感あふれる作品で、しかも面白くて最後までイッキに読んだ。イッキに読みすぎて二度読んだ。(講談社文庫 上下とも800円+税 合計1680円)