「ゲド戦記」の最後の章を買って以来、絵本は買っているけど、児童文学は買っていない。いまの子ども向きの本がどんなのかを知りたくなると図書館へ行く。
先日借りてきたのは「ハートレスガール」(2005年 さ・え・ら書房)。孤独そうな少女がクルマを運転している表紙に気を惹かれた。それに2002年に書かれた作品を今年5月に翻訳出版という新しさもいい。
マーサ・ブルックスはカナダの作家だが、ジャズシンガーとしてのキャリアのほうが長く、CDも出しているし、ヨーロッパでも活動しているそうだ。カナダのマニトバ州は現在も先住民族が多く住んでいるところで、そこの結核療養所の所長をしていた父と看護士の母に育てられた。本書もその地の物語として書かれている。
広い大平原に大きな湖、道沿いにぽつりと集落があり、数軒で「村」という場所でカフェを開いているリンダは子持ちの独身女性である。閉店しようとしたとき、大雨の中を若い女性がトラックから降りて入ってくる。いわくありげな様子を黙って見過ごそうと思うが、リンダは声をかけた。「話してみれば? あなたの困っていること」。そしてノリーンはリンダの家に泊まることになる。それがとんでもない女の子なのだ。
登場人物それぞれがみんな痛みをもって生きている。リンダもノリーンもノリーンの恋人も、心に傷を負っている。それはしっかりと生きて76歳になるドローレスも同じで、ひとり娘を白血病で亡くした過去がある。リンダを愛する農夫デルも自分が原因で兄が湖で溺死した過去がある。これが児童文学かと思うくらいの暗さだが、生きることへのひたむきさが底に流れて、未来がほの明るく見えてくる。