ローラ・リップマンの女性探偵テス・モナハン・シリーズ8作目。ある日、テスの伯父から紹介されたと、ユダヤ人の男性マーク・ルービンがやってきた。3人の子どもを連れて家出した妻を探してほしいと言う。裕福な毛皮商の妻として、なに不自由なく暮らしていたはずのナタリーはなんで出て行ったのか。敬虔なユダヤ教の信者であるマークからの説明では家出する理由がない。調べていくとマークはナタリーが自由に行動できないように、家計管理まで徹底している。それでも出ていってしまったナタリーになにが起こったのだろう。
ナタリーの友人を調べ、マークが伯父とボランティアで刑務所の慰問をしていたときの、刑務所に収監されていたユダヤ人を調べていく過程で、なにかが浮かび上がってくる。男が一緒にいるのがわかる。
テスは女性探偵のメーリングリストに入っている。子どもと謎の男とナタリーの行方を調べあげて、その土地の探偵に捜査や追跡も依頼する。そういう仕事上のことだけでなく、さまざまな相談ごとやおしゃべりもできるえらく便利なメーリングリストなのである。
テスが追跡をはじめるとマークもいっしょに行くと言う。車中で話しながらテスはだんだんとマークに惹かれていく。マークは真面目一方のようでなかなか面白い人物なのであった。
この事件の前、テスは恋人のクロウに求婚されて断ってしまう。ちょうどそのとき、クロウの母が病気になり、クロウは母の元へ戻って行った。テスの気持ちは、結婚は愛を仕事に変えてしまうから、これ以上仕事なんか抱えたくない、なのである。
物語の背景に書店を経営している叔母のキティの結婚がある。ドレスを買う話があり、最後は結婚式になる。キティは花嫁の付き添いをしたテスに贈り物をする。複雑にたたんだ紙を開くとクロウの電話番号があった。
共感できる言葉がみつかった。
【自分は会ったことのあるみんなより強いわけでも、身軽でも、そして頭がいいわけでもないかもしれない。だがそれでも多くの相手に、甘く見るなよと言ってやることはできる。】(ハヤカワ文庫 960円+税)