イアン・ランキンの翻訳本はすべて持っている。ポケットミステリが8冊(うち1冊が短編集)、単行本が2冊、文庫本が1冊。すべて読んできたけど、どれもエディンバラという都市の暗部に巣くう犯罪を取り上げた重いテーマで、読むのがしんどい。
ジョン・リーバス警部とシボーン・クラーク部長刑事はセント・レナーズ署が組織再編成のため犯罪捜査部を解散したため、市の西端にあるノックスランドに配置された。シボーンには机とコンピュータがあるが、リーバスにはコピー機のそばのマグやケトルが置いてあるテーブルが彼の机となった。電話もないしコンピュータももちろんない。そろそろ辞めたらどうかという上司のほのめかしである。
ノックスランドは低所得者用市営団地で、数少ない店舗は窓やドアを鉄格子で防衛しており、開店時間でさえ取り外していない。以前市は麻薬中毒者や乱暴者など、ほかに住居を見つけにくい人々をそこへゴミのようにぶちまけた。最近ではこの団地の中でさえ避けたいほどの住居に、政治亡命者や難民など移民がはめこまれている。そこで喉首を刺した傷を含め多数の切り傷のある死体が発見された。
シボーンのところに、以前、強姦されて自殺した娘の親夫婦が訪ねてくる。自殺した娘の妹が失踪したという。強姦犯は最近出所していた。シボーンは失踪した娘を捜して聞き込みにまわる。
同じころパブの地下で女の骨が発見されて殺人かと騒ぎになる。その骨は250年前のもので大学の研究室にあったものだ。なぜ持ち出されてここにあるのか。
移民収容所を訪ねたリーバスは収容された人々のおぞましい状況にぶつかる。また、エスニック系の弁護士に対して投石しようとする少年をねじ伏せる。黒人の移民局係員ストーリィとの共同捜査をしながらも、腑におちないものを感じて真相を探る。
いままでの作品と同様に、たくさんの事件がからみあって進行していく。失踪した娘も、250年前の骨すら、いまの事件とからんでいた。
殺された移民ユルギの子どもにおもちゃを届けるなど優しいところを見せるリーバスだが、シボーンとのえも言われぬ関係はこのあとどうなっていくのだろう。
どうでもええようなことだけど、ひとつ知識を得た。エディンバラではスコッチと言わない。ウィスキーかモルトと言う。リーバスが言うには「スコッチという語が軽蔑的に使われていたことに由来するんだと思う」。なるほど、これからはスコッチと言うのはやめよう。(早川書房 2000円+税)