今回もYさんおすすめのヴィレッジブックス発行の本である。本屋へ行くとハヤカワ文庫、創元推理文庫、講談社文庫はしっかりと見るのだけれど、ヴィレッジブックスの棚は見落とすことが多い。ええっ、こんなにいろいろ出ているのかとびっくり。古典的ミステリファンのせいかと反省。
ボストンの私立探偵アレックス・ロークは幼なじみの警察署長デイルの依頼で、故郷のメイン州の小さな田舎町に帰ってくる。アレックスは元FBI捜査官で、以前にもデイルの依頼で事件を解決したことがある。そのときは現場に行かずにすんだが、今回は難事件で行かずにすますことはできない。薄いメタリックブルーの1969年型スティングレー・コルヴェットに乗って出かける。
事件はデイルが激しい雷雨の夜パトカーで走っているとき、突然上半身裸の男が浮かび上がったところからはじまる。足下には10数カ所を刺された全裸の女性の死体があった。男は逮捕されるが、名前も言わず、女性を刺した証拠もない。全裸の女性は看護師のアンジェラだった。
警察ではデイルが待っていた。捕まえた男は法廷でも名乗らないので、身元確認に躍起になっているという。ランチの後アレックスは留置場へ行く。そして名前を一応ニコラスとして尋問をはじめるが、ニコラスはアレックスのことをよく知っているような不気味な反応である。
他に泊まり客のいない不気味なホテルでベッドに入ると、子ども時代の思い出、両親を乗せて自分が運転していた車が追突されて両親が亡くなったこと、FBIを辞めた原因など、過去の記憶が浮かび上がる。頭痛が激しく体調が悪い中、薬を飲みながら捜査を続ける。検死官ジェマの存在がアレックスを支えるのだが、その彼女にさえ怒りをぶつけてしまうのだ。
“聖ヴァレンタイン”というのは父親も関係していた孤児院で、火事で焼け落ちて廃墟になっている。アンジェラがそこで働いていたことがわかる。だんだん事件も探偵もおどろおどろしてくる。メイン州の森がまた不気味な雰囲気で、ジョニー・デップの「スリーピー・ホロウ」を思い出した。
ジョン・リカーズはイギリスの作家で、本書は第1作である。すでに3作目が出版予定されているそうだ。イギリスの作家と知るとやっぱりみたいな感じがする。(ヴィレッジブックス 870円+税)