1955年バード(チャーリー・パーカー)はニューヨークのパノニカ男爵夫人の家で亡くなった。その前に妻のチャンに電話で穏やかに話をしたが、帰って欲しいと言われたのに、ボストンへ仕事に行くと言い、疲れた体で雨の中をパノニカの家までたどりつき倒れたのだ。34歳だった。ジャズ仲間のレッド・ロドニーが麻薬におぼれているとき、そんなことでは40歳まで生きられないぞと諭したが、自分はどうなんだと言われて寂しそうだった。もう長くはないと思っていたのだろう。
製作年が1988年だから、映画館でわたしが見たのはその翌々年くらいだろうか。そのときは、もひとつやなぁと思った。わかっていなかったんやなぁ。それ以来である。今日は昼間からカーテンを閉めて見た。相方に誘われて見ることにしただけだったから期待していなかった。それが大間違い、すごい映画をクリント・イーストウッドは作ったものだ。
出だし、演奏を終えたバードが自宅へ帰ってきて、薄暗い部屋で妻のチャンにまだ起きていたのかと言う。所帯やつれした感じのチャンとの苛立つ会話のやり取りの後、バードはバスルームで自殺を図る。病院で命は取りとめるが、示された治療方法を彼は芸術家だからと、チャンは拒否していっしょに家に帰る。
それだけの間に回想がいろいろと挿入され、ダンサーのチャンとの馴れ初めも思い出される。輝く彼女を手に入れるため、彼女の家の窓の下で仲間に演奏させ、自分は白馬にまたがって現れる。サックスを質に入れての思い切った求婚にチャンもほだされる、など回想に次ぐ回想で話は進んでいく。
若き日のチャンがニューヨークの街を小粋に歩くシーンがよかった。それと夫婦喧嘩がリアルだ。激高する夫と冷たく振り切る妻、ケンカする男と女の心理の真実を描いてすごい。前に見たときはわからなかった。
バード役のフォレスト・ウィッテカーはよくやっていた。ほんとのバードはもっといい男だったらしいけど、バードはこう生きたんだと納得できた。それよりもすごかったのはチャンのダイアン・ヴェノーラ。彼女は前に見たときも好感を持ったが、今回はもっとよいと思った。