数日前のこと、相方が食事中に突然「パウロって知ってるか」と聞くので、「キリスト教のパウロかいな」と答えたものの、わたしはそれ以上のことは知らなかったのである。なぜその質問が出たかというと、いま彼が読書中のアルバート・ラズロ・バラバシ「新ネットワーク思考」の序文にパウロの例が引かれていたからだ。さっそく横取りして読ませてもらった。
「新ネットワーク思考」の序文には「伝道者パウロ」と小見出しがあって、初期のキリスト教徒はユダヤ教の背教者にすぎなかったと書いてある。最初パウロはキリスト教を迫害する側にいた。その彼が0034年にキリスト教に改宗してから、ネットワークをうまく利用してキリスト教を広げていった。パウロが12年間に歩いた距離は2万キロに及んだそうだ。それも、キリスト教がもっとも効率よく広がるような戦略を立てての普及活動だった。
ということで、なぜパウロが成功したかというと、われわれがみな連結されているからだとバラバシは説明している。
これだけなら、へえ、うまいこと言うやんと思っただけで終わっているのだが、昨日プラド美術館で一枚の絵に出くわした。ムリーリョ「聖パウロの改宗」である。パウロが倒れるような姿で上方を見つめていて、連れの者たちがよりそっている。上の方にはイエス・キリストが光につつまれてパウロを見つめている。「主よあなたはどなたですか?」「私はあなたが迫害しているイエスである」という会話がなされたらしい。
パウロの話を知らずにこの絵を見たらそのままで終わるところを、これがネットワークのパウロが誕生した瞬間の図かと感慨深く眺めた。