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ジム・トンプスン「グリフタース」

グリフターズ ジム トンプスン屑のような詐欺師たちの生活と仕事ぶりを書いているのに、読み進むうちに愛の悲劇の物語であることに気がつく。それも近親相姦の愛の悲劇だ。悲劇へまっしぐらに進んでいく1人の男と2人の女の物語である。
ロイ・ディロンの母親リリイは貧乏な白人の家に生まれ、13歳で結婚して14歳でロイを産んだ。1カ月かそこらで亭主は事故で死に、事故のときの状況のおかげで周囲からすれば裕福な未亡人となり、家族に赤ん坊をまかせていたが、3年経つとロイを引き取るはめになる。リリイと暮らすロイは学校で飛び抜けて行儀がよい上によく勉強するが、それが仇となっていじめにあう。どんなおどしがあってもリリイは嘲るようなことしか言わない。やがてロイはその態度から慰めを得るようになった。ロイは13歳になりハンサムで健康そうな若者となる。リリイの態度が変わってくる、ロイを見る目に憧れがこもる。
高校を卒業するとロイは家を出て独立し、詐欺で稼ぎながらロサンジェルスでホテル住まいして、モイラを愛人として暮らしている。ある日、ロイは釣り銭詐欺を見破られ腹にきつい一発をくらう。そこへ7年ぶりに来たリリイはロイの顔色に気づき病院へ運ぶ。リリイもモイラもそれぞれ詐欺に関わっている。リリイはモイラとの仲を裂こうと、看護婦のキャロルをロイにあてがう。退院してからは悲劇へまっしぐら。
物語はどんどんいくのだけれど、その語り口に魅せられてしまった。モイラが酒を注文したときの一節だけど、大の男の給仕がこうるさい女の酒の注文をとっていくシーンで【この遠回りの始まりはどこだろう。その遠回りが文明を脇にそらせ、片手で酒を混合し、もう一方の手では爆弾を振りまわすようなことになってしまった。】とモイラはそういう言葉ではないがそういうことを考える。そんな表現が随所にある。(扶桑社文庫 667円+税)

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2006年09月07日 17:38に投稿されたエントリーのページです。

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