「ナイン・テイラーズ」を読んだのは三度目である。さっき読み終えたところだがこれから四度目を読もうと思う。最初は名高い名作を読むという興奮があった(1998年)。二度目はじっくりと楽しんだと書いている(2001年)。
今回はもっと楽しんだ。二回とも章のタイトルを気にしていなかったのを、今回は巻の一から巻の四の鐘の鳴らし方の名称もちゃんと読んだ。「ケント高音跳ね八鐘短打曲(二渡り)」と読んでもなんにもわからないけどね。もしこの鐘の音を聴けたら幸せだなと思うのであります。
ピーター卿が従僕バンターとともに大晦日に田舎の雪道を愛車ダイムラーで走っているとき、太鼓橋のところで事故を起こしてしまう。時を告げる教会の音が聞こえたので歩いていき人家を見つける。そこにちょうど教区長がおり泊めてもらうことになる。寒村にふさわしくない大きな教会で、素晴らしい鐘楼に八つの鐘がさがっている。この夜こそ「ケント高音跳ね八鐘短打曲」をつく大切な夜なのであった。ピーター卿は若いころに鐘をついたことがあると話すと、そこへ一人病気で欠けるという報告が入る。教区長に頼まれてピーター卿がやってみることになる。礼拝の儀式が進むうちに真夜中が近づく。男子が死んだときに打つ告知の鐘「九告鐘(ナイン・テイラーズ)」が鳴り響き、それで旧年は死ぬ。それから九時間にわたって鐘をつく。これが出だしだ。素晴らしい序章だと気がつくのは全部読み終わってからだ。
その後に静かな小さな村で大事件が起きる。赤屋敷の当主サー・ヘンリーが亡くなって墓地を掘ると、先に埋葬した奥方とは別な死体が見つかったのだ。ピーター卿が帰った後に彼の探偵仕事のことを知った教区長夫妻は、事件解決依頼の手紙を書く。大喜びでバンターとともに駆けつけるが、昔のエメラルド盗難事件とからんだ難事件にさすがのピーター卿も手を焼く。