女性探偵の草分けシャロン・マコーンを生み出したマーシャ・マラー(Marcia Muller)は、最初に紹介された(日本では1980年、アメリカでは1977年)本書ではマーシャ・ミュラーとなっていた。なつかしき小泉喜美子さんの訳であり、気っぷの良いあとがきも書いている。
当時のわたしはミステリーを改めて読み出したころで、ネオ・ハードボイルドと言われていた作品にはまり出していた。一種の熱狂のようなものがあったのかなぁ。どんどん新しい作家が紹介されていたと思う。でも講談社文庫から出た本書には気がついていなかった。知ったのは雑誌「アンアン」で、探偵に扮したモデルがおしゃれな装いでポーズしている中、シャロン・マコーンは真っ赤なスーツで拳銃を頭の上にかざしていた。うわーっ、かっこいい!! わたしはあわてて本屋へ走った。手に入れてからは大切に持っているし、それ以後に出たシリーズはみんな読んできた。
「人形の夜」はシリーズ第1作なので、荒っぽく単純だが、20数年経って落ち着いた仕事ぶりの彼女の本を読むと、感慨無量という気持ちになる。
シャロンは夜中の2時半に勤務先〈オール・ソウルズ協同弁護士会〉の上司からの電話で叩き起こされる。殺人だと言われて出かけると、マーカス警部補に紹介される。彼は「あんたのようにかわいい女の子がどうしてこんなひどい仕事に首を突っこんでいるのかね?」というような表現をしなくて、「あんたから話を聞きたいんだが・・・」と言う。いい始まりだ。
5年後の1982年にはサラ・パレツキーの「サマータイム・ブルース」(V・I・ウォーショースキー)とスー・グラフトンの「アリバイのA」(キンジー・ミルホーン)が発表されて、女性探偵の時代がはじまった。