昨日に続いてS・J・ローザン「天を映す早瀬」のよかったところをあれこれ。
リディアとビルは二人で行ってくれと頼まれて香港へ行くのだが、「他人の金で地球の裏側まで旅をしてホテルで君と一週間過ごす」とビルがふざけると、部屋も階もホテルも別よとリディア。ビジネスクラスで豪勢に香港に到着する。
頼まれた遺品を届けに行った先で子どもが誘拐されたところに出くわす。ビルはフィリッピン人の子守り女マリアの線を追う。居所を知らないというマリアの妹に彼は繰り返し言う。「自分が属していないところ、困ったときに頼る人のいないところで暮らす気持ちはよくわかる。マリアが連絡してくれたら相談に乗る」。その言葉を聞いてリディアは言う。「わかるんだ。そうなのね?」「なにが?」「自分の属していないところで暮らす気持ちが」。ビルはそういうことがわかる人なのである。
次いで、ガオおじいさんの言葉。リディアが幼い日に薬種店の店先で陶壺の中を見たがってバタバタしている。母親が恐縮すると、ガオおじいさんは【せっかちに動きまわる人間はありとあらゆるところにすぐに行き着く。ありとあらゆるところへ行ったあげく、しまいには動く必要がまったくなくなるのさ】これってなんだか自分のことを言われているよう。
事件がおおかた片付いて、リディアとビルとマークは三人で食事をする。【そのとき卒然と悟った。過去とは長いものだが、未来はそれと比べ物にならないくらい長い、と。・・・さあ、リディア、とにかく食べて、現在とは短いものなのだから。・・・】そうそう、とにかく食べましょう。