ミクシィの「セイヤーズ読書会」コミュニティに感想を書くために、また「学寮祭の夜」を読み返している。楽しんで読んでいるのだが、新しい発見もあった。
本書はこれまでの作品と違って、作家ハリエット・ヴェインの視点で書かれいるから、その目に映ったピーター・ウィムジイ卿の姿と言動が読者に知らされる。ピーター卿はいまや外務省から依頼されて、彼にしかできない、つまり外国の重要人物と話す仕事にたずさわっている。外国へ出向いての気を使う激務なので、ハリエットと会っても疲れきっていることが多い。本書の前まではどっちかというと軽妙に描写されていたピーター卿が、ハリエッットと船遊びをしているボートで、疲れからぐっすり眠りこんでしまったりする。船遊びと言っても、事件のノートを検討しながらだが。そこでハリエットはじっくりとピーター卿を眺めて感慨に耽るのだ。
ハリエットの出身校であるオクスフォードのシュローズベリ・カレッジで奇怪な事件が頻発して、探偵作家という職業からハリエットが喚ばれるのだが、手に負えない状態になりピーター卿に調査を依頼する。ハリエットは集めた証拠品から犯人は教養のある人間と思い込んでいた。ピーター卿は推理と調査で真犯人を割り出すが、証拠がまだないので犯人と名指すことができない。ハリエットと犯人のほんとの標的の女性教官の身が危険であるとのみ告げる。それからの彼の苦悩を今回はとても味わって読んだ。愛する女性を危険から遠ざけることができない矛盾に苦しむピーター卿は、夜の見回りをするハリエットに犬の首輪をさせ、その上、後ろから襲われたときのために、どう倒れたらよいかを指南するのである。そして実際にハリエットは見回り中に教官の部屋で襲われる。犬の首輪と倒れる練習が役に立ったのである。