ピーター・ラヴゼイの新作を予備知識なく手にした。表紙の帯を見ると「円熟の本格ミステリ」となっている。あれっ、ダイヤモンド警視のシリーズならこんなことは書いてないね。表紙カバーの内側には「犯人はこの中に?」とあって登場人物の説明がある。タイトルが「殺人作家同盟」とすごい。原題は「THE CIRCLE」なんだけど。
最初のページでチチェスターの出版経営者ブラッカーが放火により殺される。次の章で紹介されるのがボブ・ネイラー、郵政公社の小包部門で運転手をしている彼は密かに押韻詩を書いている。妻に先立たれて14歳の娘スーと暮らしているが、ある日、パソコンの前でスーが検索で出てきた作家サークルに入ったらどうかと言う。とんでもないと言ったものの、2週間後には会合に出かける。
最初の会合に突然警官が2人やってきて会長のモーリスを連行する。ブラッカー殺害容疑である。ブラッカーはモーリスの作品を出版すると言って多額の金を要求していた。前回の会合ではそれぞれの原稿について批評し気分を悪くしている者もいた。
官能的な詩を書くトマシーンとロマンス小説を書くダグマーは、モーリスの容疑を晴らそうとボブを引き込む。またスノーという自分の苗字と同じ人間の伝記を書く女性もボブを頼る。ボブはスノーに頼まれてボート小屋へ行くが、放火から危うく命拾いする。
その後、スノーが同じく放火殺人の犠牲となり、所轄の警察では処理できないとヘンリエッタ・マリン(ヘン)主任警部が応援にくる。調べ出すとサークルの連中はどれも容疑者にしてもおかしくない。中でも魔女裁判のことを書いているナオミが怪しい。素人探偵をやっているボブとトマシーンも怪しい。調べていくうちに殺された人間の過去があばかれていく。
ヘンは葉巻をくゆらしながら、自分の領分に侵入してきたと悪意を持つ男性警官とやり合い、連れてきた部下のステラをこき使い、犯人を追いつめて行く。
いっしょに裁判で証言を行ったヘンとダイヤモンド警視がランチタイムにジントニックを飲むシーンがある。ダイヤモンドはラグビーのサポーターだからバースへ帰ると言い、ヘンはいまからチチェスターにチェックインと言う。こういう遊びが楽しい。ヘンとダイヤモンドは、前作「漂う殺人鬼」で協力した仲である。
ドロシー・L・セイヤーズの「五匹の赤い鰊」を読んだとき、タイトルの意味を考えていたら、作品中に“赤い鰊”が出てきて“偽の手がかり”とルビがふってあった。それで“偽の手がかり”のことを“赤い鰊”というのがわかった。そしてきっと“赤い鰊”というのには謂れがあるのだなと思った。本書の246ページに“赤い鰊”が出てきて、“偽の手がかり”とルビがふってある。いまも使っている言葉なんだ。(早川書房 2200円+税)