
気になっていたままだったラウル・ルイス監督「見出された時『失われた時を求めて』より」をビデオで見たが、話がわからないところがあった。本を読み直すのはしんどいので、海野弘の「プルーストの部屋」でにわか勉強してから、再度ビデオを借りてきて昨夜じっくりと見た。
マルセル・プルーストの「失われた時を求めて」はだいぶ昔に全巻を10年くらい空けて2度読んだが、数年前に3度目を読み出して挫折したままだ。最初に読んだときは10代で「スワンの恋」を読み切れなかった。30代になってようやく読み通すことができ、40代になって読んだときはプルーストを読んだという満足感にひたることができた。
そして1989年から雑誌「マリ・クレール」に連載された海野弘の「プルーストの部屋」を愛読し、終わってから単行本を買ったというわけだ。
好きな本はと聞かれたら、いろいろあるけど、なんといっても「失われた時を求めて」と答えるだろう。
サナトリウムからパリへもどってきたマルセルは、病床で女中のセレストに口述筆記をさせている。口述に疲れた彼は引き出しから写真を持ってくるように言う。その写真を見て一枚一枚名前を挙げているうちに思い出がわきあがってくる。物語に出てくる主要な人物像が浮かび上がる。
ゲネマント大公邸でのパーティへ出かけると、社交界の人たちが老いた姿で現れる。夫の死後、財産にものを言わせて二度の結婚により成り上がったヴェルデュラン夫人。金持ちのアメリカ女性がフランス貴族と結婚して貴族夫人として紹介されるなど新しい社交界が形作られていくのも見る。そこへオデット(カトリーヌ・ドヌーブ)が登場する。スワンとオデットの娘ジルベルトもいる。
目まぐるしい場面転換で、第1章の「スワンの恋」の1シーンが出てきて、オデットとスワンの部屋に子どものマルセルが行ったシーンもある。母に読んでもらった「本」をめぐるエピソードも3時代にまたがって現れる。
この映画の中心になるのはシャルリュス男爵である。マルセルが街をさまよっていると怪しげなホテルがあり、出て行く人がサン=ルーに似ていると思いホテルに入ると、そこはホモセクシュアルの客が男を買う場所であった。そこでシャルリュス男爵は若い男に鞭打たれている。
最後のほうで病みやつれたシャルリュス男爵と会うシーンが圧巻だ。シャルリュスは道ばたの広告を見て言う。このポスターは同じだと。画面が変わって子どものマルセルが海辺にいる。そこに貼ってある広告も同じココアのものだった。
ジョン・マルコヴィッチのシャルリュス男爵が圧巻だった。この映画の製作者でもあるらしい。この役をどんなにやりたかったかと想像してしまうと微笑ましい。ラウル・ルイス監督の作品を見るのははじめてだが、すごい人がいたものだ。次にマルコヴィッチと組んで、画家クリムトの生涯を描いた映画があるらしい。機会があれば見たい。監督と共にこのややこしい小説を脚色したのがジル・トランと聞いてなんとなく納得した。「海辺のホテルにて」(アンドレ・テシネ監督)は好きだったなぁ。カトリーヌ・ドヌーブが良かった。また見たい。
お屋敷が出てきて、宝石や衣装がみごとで、インテリアや食器が凝っていて、馬車が走っている。好きなものがいっぱい。楽しかった。