著者のアレグザンダー・マコール・スミスは1948年にアフリカのジンバブエで生まれたスコットランド人。ジンバブエは本書の主人公、マ・プレシャス・ラモツエが活躍する、No.1 レディーズ探偵社のあるボツワナの隣国である。ボツワナは南部アフリカにあって、ダイアモンド鉱山がある恵まれた国で、紛争などには無縁な国であるらしい。
女性には名前の前に「マ」がつき、男性の場合は「ラ」をつける。名前を知らないときは「マ」「ラ」と呼ぶ。
主人公のマ・プレシャス・ラモツエは、早く母を亡くしたが父と父の従姉妹に愛情をたっぷり受けて育った。若いときにジャズミュージシャンに惚れこみ、父の反対を押し切って結婚し妊娠したが、ひどいDVを受けて離婚。悪夢のような結婚生活とはかなくも美しく5日間を生きた子どもをもった。
14年間面倒をみていた父が亡くなり、34歳になったマ・ラモツエは父の残した牛を売ったお金で探偵事務所を開く。町に出るとまず家を買い、家の一部を抵当に入れて事務所購入の費用にあてる。自動車修理工場を経営しているミスター・J・L・B・マテコニが中古のタイプライターを運んでくれ、秘書学校から秘書を紹介してもらった。〈No.1 レディーズ探偵社〉の看板をかけ、ボツワナ初の女性私立探偵の誕生である。
開業の日、お茶ばかり飲んでいるところへ、行方不明の夫を捜してほしいと依頼がある。都会の探偵なら卑しい町を歩いて捜すところを、マ・ラモツエは聞き込み調査のあと、夜になってから隣家の犬を借り、ライフル銃を持ってワニのいる川へ行く。
三人称で書かれており、ゆったりとした文体が心地よい。短編の集まりだが、ストーリーはつながっている。そして先にあった事件が後々に解決されたりする。太めのマ・ラモツエはアフリカ大地の女という感じ。女性私立探偵小説の新しい展開がうれしい。あと2冊続けて読もう。