先日クリス・エア監督の「スモーク・シグナルズ」を見てから、もっと前に見た「エッジ・オブ・アメリカ」も彼の作品だったとわかった。両方ともアメリカ先住民居住区に住む若い人たちが主役である。
そのつながりで思い出したのがインディアン居住区を訪ねる私立探偵ダン・フォーチューンが事件解決に奔走するマイクル・コリンズ「黒い風に向って歩け」である。わたしにとって映画とミステリーが、現在起こっていることを知る手がかりなのだ。自分だけが納得しているだけだが。
10月下旬の木曜日、ニューヨークの窓が一つしかないフォーチューンのオフィスにビジネスマン風の男がやってきて、殺人事件の載った新聞を見せ、殺された女性のことを調べてほしいと依頼した。殺された女性はフランチェスカ。保守的なドレスデン市長クロフォードの娘で、家出して変名でニューヨークで暮らしていたのだ。調べていくうちに、フランチェスカはクロフォードの実の娘ではなく、妻のカチェの前の恋人の子で双子の一人だとわかる。フランチェスカは父親の推進する住宅開発計画に反対していた。もう一人の娘フェリシアも家を出てしまう。
1950年、カチェは17歳、ニューヨークで先住民のラルフ・ブラックウィンドという力強く民族的な名前の青年と恋におちた。一カ月後に結婚したが、ラルフは朝鮮戦争に送られカチェは家にもどったが妊娠していた。そして同じ階級の青年クロフォードと再婚する。ラルフは二年間北朝鮮で捕虜となり脱走し苦難の末に妻子を取り戻しにくる。しかしカチェの父親への殺人未遂で逮捕され、懲役刑を受けるが看守を殺して脱獄。その後は湖で死んだと言われているが行方不明である。
フォーチューンは先住民居住地へラルフの父を訪ねる。高齢の父はしっかりしていてラルフの生い立ちを語る。【「わしの息子にも名前があった。ヒー・フー・ウォークト・ア・ブラック・ウィンド(黒い風に向かって歩く男)じゃ。わしらが隠れておるのに、竜巻に向かって、幼いあいつがひとりで歩いて行った日にその名が付けられた。白人は〈ブラック・ウィンド〉と名付け、彼のほんとうの名前をとりあげてしまった。しかし、だれも彼の人生までは奪えん。人間は一人一人自分の人生を知っておるし、生きておるのか、ただ歩いているだけかも知っておる」】(続く)