トリュフォーの映画の中ではよくないほうの映画で、わたしは封切りで見ているのだが、終わったときがっかりした記憶がある。最近ヌーベルヴァーグの見直しをしているが、好きだった映画がつまらなく、なーんだと思った映画がおもしろかったりする。「黒衣の花嫁」(1968)はいま見ておもしろい映画だ。テレビでやるとわかったとき思い出したんだけど、ジャンヌ・モローが画家のモデルとして、狩猟と月の女神アルテミス(ディアーナ)そのものになるのを思い出し興味しんしんだった。
「幻の女」(ウィリアム・アイリッシュ名義、カボチャ型の帽子をかぶった女が出てくるのを覚えている)を読んで、次くらいに「黒衣の花嫁」を読んでいる。両方とも「別冊宝石」という雑誌だった。挿絵がとてもよかった。ストラップレスのドレスという言葉をはじめて知った。
自殺しようとするのを止められ、探さないようにと言いおいて家を出て行った女性(ジャンヌ・モロー)は、次々に男を殺していく。結婚式で教会から出てきたときに腕を組んでいた夫が銃で撃たれたのだ。向こう側のビルの一室で5人の遊び人の男たちが、誤って実弾のこもった銃を撃ってしまい、殺人に気がついてそれぞれ逃げおおせる。(こんな古い作品だから最後まで書いてもいいでしょう。ダメなら以下を読まないで。)
ベランダから突き落とし、毒薬を酒に入れて飲ませ、もの入れに閉じ込め、3人を殺す。4人目が画家で、モデルになるとディアーナになれと言われる。白いチュニックを着て矢入れを肩に弓をかまえるスタイル。そして弓で殺す。5人目は刑務所にいるので、ここでわざと捕まり、いままでのを告白するが、何故やったかは言わない。そして刑務所内で第5の殺人は叫び声で終わり。
ヒロインがこれだけまともにアルテミス型なんだからすごい。本人にとって5人を殺していくことは公正なことなのである。だって、私と彼の幸せな人生を潰したんだもの、そして犯人たちは逃げおおせて幸福な生活を送っているのは許せない。こうなったときアルテミスだから自分自身の目標に精神を集中して迷いがない。そして、無慈悲な犯行に及ぶ。
この映画はトリュフォーがジャンヌ・モローに捧げた作品だそうだ。そして衣装のピエール・カルダンは恋人だ。美しい衣装をとっかえひきかえ着替える。彼女はこのとき40歳くらいだそうで、ちょっと老けたところは感じられたが、走ったり早足のときの動きが速くて(これもアルテミスの特徴)若々しい。