現代ウィーン・ミステリー・シリーズ全9冊の中の1冊。エルンスト・ヒンターベルガーは1931年生まれの生粋のウィーン下町っ子作家だそうだ。本書は1984年以来書き続けている8冊の刑事小説の中の1冊である。舞台となるジンメリングは、空港からウィーン市内に行くとき通過する殺風景な地区で、中小の町工場と集合住宅が混在するところである。
女性の巡査部長モニカ・ズットナーはこの日、警視庁刑事部殺人犯捜査課二係に配属されて出勤する。みんなに紹介されて、老練なオットー・ホットヴァーグナー警部補につくように言われる。タバコの煙がもうもうと立ちこめる刑事部屋だが、コーヒーがうまそう。それに警察食堂のご飯がおいしそう。さすが古都ウィーンだ。
アメリカやイギリスの警察小説とどことなく違っていてヨーロッパという感じがする。そして東欧諸国からの移民問題や人種問題の複雑さもある。
オットー・ホットヴァーグナー警部補は一人暮らしで、30キロも体重オーバーなのに、ビールをがぶ飲みし大量の肉を食べタバコを絶やさない。ええかげんにせんといつ倒れるか分からへんでとこっちがひやひやする。みんなで仕事中にレストランに行くと、みんなが注文した定食ランチ〈魚のスープと団子つき内臓煮込み料理〉を、そんな水っぽいもん食べられるかと、2個の団子つきブルゴーニュ風焼き肉と大量のポテトサラダを注文する。もう一回読んで料理名を書き出しておかなくっちゃ。
シュトイジッツという男が受付に娘イロナの行方不明を届け出た。ウィーン中の警察にイロナに関する情報が流されるが行方はわからない。数日後ドナウ川で少女の水死体が見つかりイロナだと判明。絞殺されていた上にイロナの体に性的虐待の跡が見つかる。調べていくうちに父親が虐待していたのを母親が黙認していたこともわかる。そうこうするうちに父親が殴られて死んでいるのが発見される。
刑事たちの地道な捜査が続くがなかなか事件の真相は見えて来ない。そのときモニカがほんの思いつきだけど、アメリカの小説にこんなのがあると言い出す。それが取り上げられ再度の調査の末、真相が見えてくる。(水声社 1800円+税)