O.R.メリングのケルトファンタジーの4冊目(1999年)、翻訳は2001年。今回も鉄の意志を持った少女が、さまざまな障害にくじけず妖精の国へ行き、自分が望みそして与えられた使命を果たす物語である。そして主人公の少女がハンサムな青年と恋に落ちるのが定番。
ローレルの双子の妹オナーが事故で亡くなってから1年経った。まだそのショックから抜け出てないローレルは、祖父母が催したオナーの一年祭に出席するために、カナダからアイルランドの教会に来ている。オナーが亡くなって以来、彼女の日記を読み続けてきたローレルは、オナーの秘密を解かねばと思っている。ローレルは行動的でオナーは夢見がちと、二人は全然違うタイプの少女だった。
教会で牧師の息子イアンと出会う。17歳のハンサムな少年だが両親の悩みの種である。祖父母が彼の力になってあげなさいと言ったとき、オナーは「あの〈怒れる若者〉ね」と言ったことがある。いまローレルが「鼻つまみでいるのは楽しい?」と聞くと、平然として「ぼくが不良をやめたら、ほかのやつらはどうやって、自分が善人だってことを知るんだよ?」と言い返す。ローレルは彼を突き飛ばしたが、あとでイアンに感謝しなきゃと思う。自分の奥深く眠る何かを呼びさましてくれたから。
ブレイ山頂のオナーが亡くなった場所へ行くと一人の男が現れて待っていたと言う。祖母の家の昼食のときイアンが家出したと聞かされる。祖父はローレルにアイルランドの神話や妖精の本を出して教えてくれる。古代アイルランドでは妖精国は死後の世界だった。いまでもそれを信じている人がいるという。本にはさまれた押し花を一つ口にすべりこませると妖精が現れる。妖精クラリコーンはアキル島へに行き〈夏の王〉を探してほしいとローレルに頼む。〈夏の王〉が魔法の島に〈夏至のかがり火〉を灯さねばならないのだ。
アキル島には祖父母の別荘がある。出かけるときに、列車でおばばとダーラに出会う。彼らはグウェンを訪ねてカナダへ行くところだった(3人とも「妖精王の月」に出てきた)。
アキル島の別荘にはイアンが先に来ていた。それから二人は妖精の国へ行き冒険がはじまる。そして妖精の国で女王となっているオナーに会う。
海抜二千フィートの海まで垂直に切り立った崖をのぼれっこないとイアンは言うが、彼の気持ちは決まっている。ローレルが鉄の意志を持っているのを彼は知っている。ローレルは言う「女の子は、やるべきことはやるんだわ」。(井辻朱美訳 講談社 1500円+税)