副題が「ウィン・ディキシーのいた夏」となっているが、原題どおりだとそうなる。
アメリカ南部フロリダ州の小さな町に引っ越してきた10歳の少女オパールが語る物語。父親は牧師でこの地の教会に就任した。教会のことばかり考えている人なので、オパールは心の中ではパパと呼ばずに〈牧師さん〉と呼んでいる。
〈牧師さん〉に頼まれてスーパーへ行くと、野菜がころがっていて、大きな汚い犬がいてオパールににたーっと笑いかけた。店長さんがどなるので、ついオパールは「あたしの犬です」とさけんでしまう。「ウィン・ディキシーおいで」って。その名前はそのスーパーの名前だったんだけど。
その犬と〈牧師さん〉のパパとの暮らし、だんだん親しくなっていくちっちゃい女の子、とても小さなおばあさんの図書館館長ミス・フラニー、魔女と呼ばれているお年寄りのグロリアさんともウィン・ディキシーを介して知り合う。
オパールの母親は3年前に一人で家を出て行ってしまい、父親はまだそのときの傷が癒えていない。子どもが背負っている厳しい現実があって、少しも甘やかさずにいっしょに受け止めようとする大人がいる。
グロリアは目が悪くて本が読めないので、オパールは図書館で本を借りて読んであげようと思う。館長さんは「風と共に去りぬ」をすすめる。そして南北戦争を知っているかと聞く。ありきたりの返事をすると、「そう、どれいと、南北諸州の権力とお金をめぐってね。ひさんな戦争だったんですよ。わたしのひいお祖父さんも、その戦争に行ったの。まだ、ほんの子どもだったのにね」その少年は悲惨な戦争を体験して、ヴァージニアからジョージアまで歩いて帰った。そして発見したのは焼き払われた自分の家だった。母も3人の妹も死んでいた。
オパールがパーティを思いつく。グロリアさんの家の庭に、友だちとこれから友だちになる子、ミス・フラニー、〈牧師さん〉のパパ、ペットショップで働くギターがうまいオティスが集まる。
作者はこの本のことを、子ども時代をすごしたアメリカの「南部と、犬と、友情への賛歌」といっているとあとがきに書いてある。(ポプラ社 1300円)