ここにあるのは第1巻「海女の珠とり」『海士』(岡村 桂三郎・絵)、第3巻「青葉の笛」『敦盛』(大橋 彰・絵)の2冊だが、とてもおしゃれできれいで、子どもは楽しめるかどうかわからないが、大人は楽しめる絵本だ。
両方ともかんじんの能は見たことがなくて残念だが、絵を見て文章を読んでいると、舞台が想像できて楽しんだ。といっても、舞台そのものを絵本にしているのではない。それぞれのシーンがとてもリアルに描かれている。特に「海女の珠とり」の幻想的な海と竜と海女の絵に惹かれた。
物語は長い時代を超えて残ってきたものだから洗練の極致である。しかし為政者の庇護にあった能だから、内容は人間の美しさを描きながらも差別意識が根底にある。それを「海士」の解説で、身分差別、女性差別といったたくさんの禁忌が含まれているとしっかりと書いてある。片山清司氏の能の普及につくそうという熱い気持ちが伝わってくる絵本だ。(アートダイジェスト 1800円+税)