
警察を早期退職して私立探偵になったハリー・ボッシュの活躍は「暗く聖なる夜」と「天使と罪の町」の2冊で知ることができる。わたしはどっちかというと私立探偵をやっているボッシュが好きだが、少数派のはず。もしかしたら、わたし一人かも(笑)。「ハリー・ボッシュが帰ってきた!」と喜ぶのがファンなんだろう。
3年間の引退生活で、自分は警察官であることを自覚したハリー・ボッシュは、元同僚のキズ・ライダーから復職できるという連絡を受け、今日から出勤するために支度している。1年間の仮採用である。そこへ本部長からの即時出頭命令があった。本部長はボッシュの経歴を徹底的に調べ、そのスタイルに懸念を抱いたが才能を信じて再就職を受け入れたという。そして前任の本部長の時代と変わったことを強調する。
オフィスへ行くとキズがいて「さて、あたしたち、もどってきたわね」と言う。キズは本部室勤務だったが現場仕事に戻りたかったのだ。キズは小柄な黒人女性である。彼女が本部にいて活躍したおかげでボッシュは復職できたのだ。二人は未解決事件班に配属されて17年前に起きた少女の殺人事件の再捜査にあたることになる。
プラット班長は仕事の前に二人に言う。「・・・われわれは9回裏、試合の勝敗がかかっているときに投入される投手に似ている。クローザーだ。・・・」ボッシュの市警での経験でめったにないことだが、この男のために働きたいと自分が思っているのに気づく。
出だしの調子がよすぎる。だが間もなく強力な敵の登場! いままでお互いに好意を抱くことがなかったアーヴィング副本部長がやってきた。彼は新しい本部長に実権を奪われ閑職に追いやられている。ボッシュがへまをやるとあの男の株がさがり、わたしの株があがると言う。もう40年以上この市警にいるのだからもう少し待つと。
アーヴィングからの脅迫を忘れるのにいちばん良いのは、殺人調書に没頭することだ。(古沢嘉通訳 講談社文庫 上下とも714円)