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ハニフ・クレイシ「ぼくは静かに揺れ動く」

7年も前に出ていた本をいまごろ図書館で発見した。手にとってあとがきを読むと、訳者は中川五郎さんで、翻訳作業をしているとき、作者と一心同体になっているかのような不思議な感覚を何度も味わったと書いておられる。中川五郎さんは60年代後半から70年代にかけて大阪でフォークソングを歌ってた人だよね。続けて読んでいくとハニフ・クレイシは「マイ・ビューティフル・ランドレット」の脚本を書いた人だったとわかった。パキスタン系移民(本書ではインド人となっている)の父とイギリス人の母との間に1954年ケント州で生まれた。

知り合ってから10年、結婚はしていないが一緒に暮らして6年になる妻スーザンと5歳と3歳の息子を置いて、明日家を出て行こうと決意した男の独り言である。出て行く先はとりあえず友人のアパートに決めている。妻も子どももなにも知らずに普通の一日である。
スーザンは会社に出勤し〈ぼく〉は別に持っている仕事場へ行く。作者と同じように作家であり、映画の脚本を書いてハリウッドに招かれたこともある。夜は家に帰っていつもと同じように子どもの世話をする。その間、ずっとなぜこの家を出て行くのかを語り続けているわけだ。生まれたときからのこと、父母のこと、スーザンと知り合ってからのこと、恋人たちのこと。
スーザンは慎重で思慮深く頭がよく仕事ができる。真面目で行儀よい人間に育てられた多くの若い女性と同じである。〈ぼく〉によると、だから若い女性は最近の仕事社会にぴったりなのだ。

スーザンと息子たちが寝静まったあと、つきあっていたニーナがクラブにいると聞いて出かけ、ニーナは見つからなかったが、探しているとき殴られてしまう。夜中に家に帰るとスーザンが起きてきて、傷をいたわりお風呂に入れて洗ってくれる。そしてベッドへ連れて行き、背中合わせに寝る。

ほんとに出て行くのかなと思いながら読んでいた。その朝、スーザンは「夕食のときにね」と大声で言って自転車で仕事に出かける。部屋にクリーニングをとりに行ってとメモがある。クリーニング屋に行き、それから自分のメモを書く。
イギリス文学はとても幅が広い。カズオ・イシグロを思い出した。(中川五郎訳 発行所:アーティストハウス 発売元:角川書店 1000円+税)

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2007年10月29日 00:15に投稿されたエントリーのページです。

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