
夢中になって読みふけった。ミクシィのマイミクで、何度かこの本がいいよと教えてくれている人が絶賛されていたので興味を持った。新刊書の売り場で見かけたって、自分の判断では買わないタイプの本だ。
タイトルも裏表紙の解説文を読んでもあまり読みたくない本だ(笑)。だけど信頼している人が「すげぇ!」と絶賛されているのだがらと読み出した。これは「すげぇ!」とわたしも言う。
けっこう長い序章があって、主人公たちそれぞれの様子が紹介される。ここを読んだらもう長い物語に惹き込まれ、なにもかもおいて物語の世界に突入するしかない。
二十世紀に入る直前のヨーロッパの架空の都市が舞台だが、ロンドンぽいけど、人の感じがパリのようでもある都市。馬車がまだ主流だが、主人公のミルトン・ジェルミナル警部はダイムラーのオートバイに乗って疾走する。
都市の近郊に製糖工場があって労働者はこき使われ、安酒を飲んでアルコール中毒になり、体を壊していく。女たちは妊娠しては中絶手術を受けて血を流す。障害を持って産まれた子どもたちも多い。労働運動の指導者がやってきて立ち上がろうと呼びかける。
そんな町でおぞましい殺人があり、ジェルミナル警部が都市部から派遣される。仕事上では華々しい成果をあげてきたが、彼の現在は麻薬から抜け出せずに惨憺たる状況である。連続殺人の遺体に残されたサインはなにを意味するか。阿片に誘惑され、上司のいやがらせに対抗しつつ捜査を続ける。サーカスの美しい踊り子との愛が一瞬光り輝く。
百年前の物語であると同時に近未来の物語のようにも思えてくる。主要な登場人物のドクター・ノヴェールの生まれや生き方や思想から、〈出生前診断〉についても考えさせられてしまった。
ルカ・ディ・フルヴィオは1957年ローマ生まれ、本書は映画化が決まっているそうだ。(飯田亮介訳 ハヤカワ文庫 上下とも760円+税)