レジナルド・ヒルのダルジールシリーズ長編12作目(うち2作は未訳)で、わたしはかなり前に読んでいる。今回は二度目になるが読み出したらおもしろくて、いいとこどりで読むつもりだったのに結局全部読んだ。
1963年、ケネディ大統領が暗殺された年、イギリスでは元外交官がソ連のスパイであることが発覚し、大臣が辞職する結果になったプロヒューモ事件があった。その時代にヨークシャーの貴族の館でのパーティで招待客の女性が殺され、邸宅の主ミックルドア卿と愛人とされたシシーが逮捕され、裁判の結果、ミックルドア卿は絞首刑となり、シシーは終身刑となった。当時ダルジールは血気盛んな若い刑事だった。
27年後経ったいま、シシーの容疑に疑問があるのがわかりシシーは出所する。
当時の責任者タランティア警視の捜査について調査するため、ロンドンから調査チームがやってくる。そのチームのリーダーがダルジールが嫌いな副警察長に出世したヒラーである。目をかけてくれた上司タランティアを擁護しようと、ダルジールはヒラーの裏をかいて捜査をはじめる。いやいやながら加わったパスコー主任警部も熱を入れ始める。
この事件の真相を探るためにダルジールがアメリカに行くところが本書の目玉だ。飛行機から降りてすぐに美術品の密輸業者を警察に引き渡すし、その夜にはホテルで襲われたのを逆に捕まえ、アメリカの新聞に「クロコダイル・ダルジール」と書かれる。
ダルジールもパスコーも貴族階級の人間と話す機会があるのだが、レジナルド・ヒルの冴えた皮肉な書きっぷりが楽しい。【イギリス上流階級に属するかどうかの本当の基準はその血統にあるのではなく、じつはその皮肉の辛辣さにある。ウェストロップの辛辣さは永久凍土なみだった。】【王族の一員であるジェームズ・ウェストロップ以外ならだれが犯人にされようとかまわないと考えていたからですよ。】
エリーは父がアルツハイマー病にかかっており、介護する母も様子がおかしいと母の家にローズを連れて行っている。パスコーとエリーの間に冷たい風が吹いて、パスコーは悩む。(嵯峨静江訳 ハヤカワポケットミステリ 1500円+税)