レジナルド・ヒルの「殺人のすすめ」 を紀伊国屋書店で見つけたのだが、お蔵入りしていたのが出てきたみたいなメモが表紙の裏についていた。奥付けには1980初版で2003年4版となっている。初版時はいうまでもなく、2003年でもあんまり熱心な読者でなかったもんなぁ。あとがきによると日本で最初の翻訳のようだ。
うれしくてさっそく読みはじめた。仕事やら用事の合間にちょこっと読むのにぴったりである。20年くらい後のダルジール警視、パスコー主任警部が出てくるのを何度もじっくりと読んでいて、知り合いみたいな気持ちなのだ。
もう太っているダルジールだけど若さがある。パスコーのほうは独身である。しかも本書でエリーと大学卒業以来久しぶりに出会うのである。彼は警察官、彼女は大学講師として。
事件は大学の校庭で起きた。新しく校舎を建築するために校庭の彫像を移転する工事で、ショベルカーが台座を動かしたときに人の骨が見つかったのだ。任務についたダルジールとパスコーは大学に泊まりこんで捜査をはじめる。死体は女性で、5年前にスキーに行って霧の中で事故死し、遺体が見つからなかった前学長ガーリングということがわかる。なんでオーストリアで死んだはずの彼女の死体がここにあるのか。次に女子学生の死体が見つかる。
学生自治会長フラニー・ルートは金髪の美青年で、頭がよくニヒルである。そう、このルートこそ「死者との対話」「死の笑話集」でパスコーを悩ます存在になるのだ。
大学の事件で思い出すのはロバート・B・パーカーの「ゴッドウルフの行方」だ。サラ・パレツキーの「サマータイム・ブルース」も大学が出てきたよね。60年代、70年代のアメリカの大学と学生の様子がよくわかる。今回は70年代のイギリスの大学生の生態が描かれていておもしろい。
大学に行ってないダルジールは学長に皮肉を言うし、大学で社会学を学んだパスコーに対してもぐじゃぐじゃ言う。事件を解決して大学構内の車道をゆっくりと行くとき、ダルジールは言う。「すると、これがおれが大学教育を受けないで味わいそこなったものというわけだ」。わたしも大学教育を受けてないから、ダルジールの気持ちよくわかる。(秋津知子訳 ハヤカワポケットミステリ 1200円+税)