サラ・パレツキーのヴィクシリーズをはじめとする、たくさんの女性探偵ものが訳された時代があった。いまから10年〜20年くらい前のことだ。たくさんあったが読むうちにこれだという基準がだんだんできていったみたいで、いま手許に残っているのはすべて生真面目な探偵たちを描いたものである。アメリカの作家たちがその時代を書き、それを日本のわたしたちが共感を持って受け入れたという時代があったのだ。
本書は実際に私立探偵をしたことのある作者による女性探偵物語である。主人公のデヴォン・マクドナルドはミネソタの〈シャーマン&マクドナルド探偵事務所〉で働いている。教師から転職し、パートナーに昇格させてもらったばかり。結婚して子どもが一人いたが、その子を事故で失った。夫が蒸発したため一人で狭いアパートで暮らしている。好意を持った人の言葉によると「遠慮のないものいいをする、ストロベリー・ブロンドの女性」である。
ある日ドクター・レヴィがやってきて、彼の息子ディヴィットは白血病で骨髄移植しか助かる道はないと言う。そして、レヴィが20年前に医学生だったとき、アルバイトで不妊治療に取り組む診療所に精子を提供していたことがあったと言い、この世にいるかもしれない息子の異母きょうだいを探してほしいと依頼する。デヴォンは該当する子どもの親ホフマンを見つけるが、彼は人種差別主義者であり秘密結社に所属していた。黒人をアフリカへ帰せというような運動をする集団である。ホフマンの息子タイラーは父親と全然違う頭の良い少年で教師にも目をかけられている。そしてタイラーはホフマンと血がつながっていないとわかって舞い上がらんばかりに喜ぶ。そんなときホフマンが殺されレヴィが犯人として逮捕される。
しぶとい調査によって真犯人を見つけるデヴォンはカッコいいというよりも、読者と等身大と言ったほうが似合う感じの人である。でもこれだけねばれる人はそうざらにいない。