ナンシー・ベーカー・ジェイコブズのもう一冊「復讐の赤」を大急ぎで読み終えた。本書の訳者あとがきには、シリーズ3作目が本国アメリカで刊行されたとあるが、翻訳はなかったようだ。
実は今回の読書は先日亡くなられた訳者高野裕美子さんの追悼読書でもある。ネットニュースの訃報で2月10日にくも膜下出血で亡くなられたことを知った。そのときは高野さんの訳書を思い出せなかった。それからすぐミクシィのコミュ「私立女性探偵たち」に「楔の青」を読んだと書き込みがあり、どんなんだったかなと押し入れから出したら、高野さん訳だったのだ。なんだか縁を感じてもう一冊も読むことにした。
私立探偵デヴォン・マクドナルドの事務所へ二人の女性がやってくる。同じ男ピーターズに結婚を申し込まれてころっとだまされ、財産を取られてしまったと言う。中年の冴えない男だが、聞き上手で女性の心をうまくとらえるのだ。デヴォンは三人目の被害者を捜し出し、三人がまとまって彼と対決すれば解決できるると考える。デヴォンは彼に金持ちの未亡人を装って近づき、カーメルにある山荘を借り受けて対決の段取りを組む。
対決は思ったようにいかず逃げられてしまう。翌日ピーターズの死体が山荘の近くで発見される。車に乗ったデヴォンはブレーキがきかず木に激突して大けがをする。ブレーキにだれかが細工したのだ。その後、被害者の一人が死んだのが自殺と認定される。彼女がピーターズを殺して自殺したということで事件は終了する。
カーメル警察のハンサムなウィンスロップ警部補は彼女に好意を持って食事に誘ってくれる。顔の傷跡を気にしている彼女に「そんなに自分を卑下するんじゃない。・・・きみがすばらしい美人だということも知っている」と言ってくれる。子どもの頃から他人にけなされる前に自分のあら捜しをするようなところがあったと反省するデヴォン。恋愛小説としてもいけてる。
久々に帰ったミネソタは出発したときよりも暖かくてマイナス15℃で新雪が5インチ積もっている。納得のいかないデヴォンは真犯人を捜そうと必死で頑張る。(高野裕美子訳 ハヤカワ文庫 600円)